歯周病とは
歯と歯肉の境目(歯肉溝)に歯垢と呼ばれる細菌の塊が停滞し、その中の歯周病原菌により感染を起こすと、歯肉が炎症を起こし、進行すると歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かしてしまう病気です。
厚生労働相の平成11年歯科疾患実態調査では、15~24歳の36.5%が、35~44歳の84.27%が、55~64歳の85.79%が歯周病にかかっていると言われています。
歯周病のcheck!
- 歯肉が腫れることがある。
- 歯みがきをすると、歯肉から出血する。
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする。
- 口臭がある。指摘されたことがある。
- 歯が長くなった。歯肉が後退している。
- 歯の間に食べ物がよく挟まる。
- 歯がグラグラする。
- 歯肉を押すと膿(ウミ)がでる。
- 歯が浮いた感じ、ムズムズする事がある。
- 歯科医院にあまり通院した事がない。
虫歯の治療をした事があまりない。
こんな自覚症状に1つでも当てはまれば、あなたは“歯周病”かも!
ぜひ、かかりつけの歯科医に診てもらって下さい。
歯周病の症状、病態
歯周病は15歳前後に発症し、ゆっくりと進行するため自覚症状(痛み)がほとんど無いため、30、40歳代で気づいた時は、進行した歯周病になっている事も少なくありません。進行した歯周病では骨が溶けてしまっているため、現代医学では元の状態に再生することは不可能であり、最悪の場合、歯を抜く事となってしまいます。ですから、10、20歳代での早期発見、早期治療、予防が大切となってきます。
歯周病の進行段階は以下のように、歯肉炎、軽度歯周炎、中等度歯周炎、重度歯周炎と4段階に分けられます。
健康な歯肉
健康な歯肉は、色が薄いピンク色で、歯と歯の間の歯肉がピラミッド型をしています。
歯肉炎
歯と歯肉の境目(歯肉溝)に歯垢が付着し、歯周病原菌に感染すると、歯肉に炎症を起こします。歯肉は赤く腫れ、歯みがきをすると出血する様になります。この段階では、骨(歯槽骨)には、影響を及ぼしていません。
軽度歯肉炎
歯肉炎が進行し、歯と歯肉の付着が破壊され、歯周ポケットと呼ばれる深い溝が形成され始めます。骨(歯槽骨)は軽度の吸収を起こし始めます。歯肉縁下に歯石の沈着もみられます。歯肉炎と同様、歯肉は赤く腫れ、出血がみられます。見た目は、歯肉炎と区別がつくにくい事もあります。
中等度歯肉炎
歯周ポケットはより深い溝となり、歯石の沈着およびより歯垢の付着が起こり歯肉はより腫れ、自然出血、排膿も起こします。また歯肉の退縮もみられます。骨(歯槽骨)は中等度吸収を起こし、歯がグラつき始めます。
重度歯肉炎
歯肉は退縮し、その下の骨(歯槽骨)も高度に吸収し、歯を支えている部分はほとんど消失し、歯肉のみで付着している部分もあります。歯はグラグラで、食べ物は痛くて咬めない状態です。この段階では、歯を残す治療は困難となります。時として、自然脱落する事もあります。
歯周病の原因
■主因子歯垢中に存在する歯周病原菌が原因です。
■歯周病をより増悪する因子- たばこ
吸っている人は、吸っていない人の3倍程歯周病にかかりやすく、それによって歯を無くしてしまう割合は2倍も高いという報告があります。
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素の作用と言われています。
- 咬合異常
歯ぎしり、くいしばり、歯列不正
- 全身的疾患
血液疾患、糖尿病、高血圧症
- 不良な補綴物
あっていない銀歯、充填物
歯周病の検査
●歯周ポケットの測定
歯と歯肉の間の溝の深さをプローヴという測定器で測定します。
1~3mmまでが健康、あるいは健康を保てる範囲と言われ、4mm以上は歯周病が進行している状態を表します。この時、出血すると歯肉に炎症があり、歯周病が進行している事を表します。
●歯肉の色、状態を診ます。
●歯の動揺度
健康の状態もわずかな歯の動きがありますが、歯周病が進行すると動揺度が増します。
●レントゲン写真
レントゲン写真により、歯を支えている骨の吸収度を診ます。
健康な人のレントゲン
歯周病の人のレントゲン
●咬み合せの検査
咬み合せに問題があり、歯周病を悪化させる原因となっている場合、咬み合せを調べます。
●PCR(プラークコントロールレコード)
歯周病の原因である歯垢を毎日の生活の中でどれだけおとせているか調べます。(はみがきの状態を見ます。)
歯周病の治療
■歯磨き歯周病は先ほどより述べている様な歯垢中の細菌による感染症です。まずは、原因である歯垢を、毎日丁寧に歯磨きをしましょう。歯と歯肉の境目に着く歯垢が原因で、鏡を見ながら歯ブラシを歯肉の法へ45度に傾け磨きましょう。また、普通の歯ブラシの届かない歯間を磨くデンタルフロス、歯間ブラシも使えると良いでしょう。これだけ歯を丁寧に歯磨きすると、最低5分はかかると思います。かかりつけ歯科医院にて、自分の歯磨きをcheckしてもらい、指導を受けましょう。“磨いてる人”でも磨き残しが50%位残っている事が多いです。最近は良い電動ブラシ(音波、超音波)が多くあります。歯医者さんに相談してみて下さい。
歯周病の治療・予防は、「歯周ポケット」の歯垢を落とすことです。〈基本は、ていねいなブラッシング〉
■歯ブラシの選び方
●大きさ
大きい歯ブラシでは、口の中で動きがとれません。
歯の奥までとどくような小さめの歯ブラシを選びましょう。使う人の上の前歯2本分くらいが良いでしょう。また、ヨコ3列、タテ6~8列の配列されているものが良いでしょう。
●硬さ
いわゆる普通か、やや軟らかめのものが良いでしょう。硬めのものは歯、歯肉を傷つけることがあります。
■歯ブラシの持ち方
“えんぴつ”を持つ様にして毛先に余分な圧力がかからない様にみがきましょう。
■歯周病に効果的なブラッシング方法
●バス法歯ブラシの毛先を歯と歯グキの境目に45°の角度にあてて、小刻みに動かし1~2歯ずつみがきます。
・奥歯・前歯の外側の磨き方
毛先を歯に対して45°にあて、小刻みに動かす。
・前歯の内側の磨き方
ブラシを立てて上下に動かす。
※どの部位も歯と歯グキの境目の歯垢を落とす様歯グキに毛先があたる事を意識して下さい。
・奥歯の内側の磨き方
毛先の先2分の1を使い、斜めに入れ、小刻みにして動かす。
■みがく順番を決めてみがきましょう
上顎か下顎のうら側からぐるっと1周し(図の1番)、次に外側を磨き(図の2番)、最後に交合面(図の3番)を磨いてください。毛先をじょうずに活用しましょう。
■電動ブラシについて
ブラシ先端が左右に振動するものか、回転するものなどがありますが、基本的には“ふつうの歯ブラシ”と同じあて方です。
■歯間清掃用具
歯ブラシでは落とせない歯と歯の間の清掃用具です。 歯周病では、歯と歯の間から悪くなる事も多いので要注意部位です。
〈デンタルフロス〉
歯と歯の間に歯面にそって、ゆっくりと斜めに挿入します。
歯の側面をこすりながら2~3回上下に動かし、清掃します。
柄の付いたタイプ
〈歯間ブラシ〉
歯グキを傷つけないように静かに歯と歯の間に挿入します。
ブラシを水平にして、ゆっくりと前後に2~3回動かし清掃します。
※患者さんの歯並び、咬み合せ・歯周病の状態など各々、違いますので、詳しい事はかかりつけ歯科医院の歯科医師・歯科衛生士にご相談下さい。
■歯石除去
歯垢が石灰化すると歯石という状態で歯に沈着しています。歯石は、歯肉縁上または歯肉縁下(歯肉の内側)にも沈着しています。
歯石は歯ブラシでは取れません。歯科で除去してもらうしかありません。歯石形成には個人差はありますが歯磨きが不良だと1週間もすると形成されます。定期的な除去が必要となります。
■歯周外科手術
重度に進行した歯周病を治すのに必要な場合があります。最近では、歯周病にて失われた歯槽骨などの歯を支える組織の再生を促す治療法(歯周組織再生療法)も急速に普及しています。
詳しくはかかりつけの歯科医に相談して下さい。
■歯並びや咬み合わせの治療
咬合異常が歯周病の増悪因子となっている場合、矯正や補綴物による治療が必要な事があります。
歯周炎と全身疾患の関係
歯周炎が進行すると全身にさまざまな悪影響を及ぼすことが近年の研究で言われています。
- 脳血栓、脳梗塞
- 誤えん性肺炎
- 細菌性心内膜炎
- 血管障害、動脈硬化、心筋梗塞
- 糖尿病
- 早産、未熟児出産
歯と全身の健康を守るには「毎日、口の中を清掃し、いつまでも清潔に保つ」ことが、とても大切なこととなります。
歯周病の予防
■ホームケア(家庭における予防) 毎日、きちんとブラッシングをして丁寧に歯垢を取り除くことが大切です。ただし、「磨いている」と「磨けている」は異なりますので、“歯科医院”にて、あなたに合ったしっかりとしたブラッシング方法を学びましょう。
乳酸菌の種類の一つ、乳酸菌LSIを継続的に食べる事により、悪玉菌である歯周病原菌の増加を抑える効果があると言われており、最近、歯周病予防の一手段として注目されております。この乳酸菌LSIを含む菓子が最近発売されております。
たばこを含め、全身的健康管理も大切なことです。
■プロフェッショナルケア(歯科医院における予防)
磨いている人でも、必ず磨き残しがあります。そして歯垢を放っておくと、固くなり歯石となります。この様にホームケアでは取れない歯垢、歯石を定期的(3~6ヶ月)に歯科医院にて除去し、健康チェックしてもらいましょう。
一度、歯周病の治療を終了してる方も安心してはいけません。以上の事から、また放置しておくと通常は3ヶ月位で再発傾向になります。継続して定期検診、予防処置を受けて下さい。
■早めの検診、治療
歯周病は16歳位から発症します。早期に検診にて無症状の時に、発見、治療する事が大切です。初期の歯周病であれば、簡単な処置にて完治させる事も可能です。中等度~重度の歯周病でも、現在は治療法の進歩で適切な治療とホームケアをきちんとすれば、抜かなくてもすむケースもあります。少しでも自覚症状(診断check表を参考に)があったら、積極的に歯科医院にて検診を受けてみて下さい。